食への愛とは世界に不変の物であろう。
どうやらアメリカでは7月は料理月間であるらしい。様式は違えども料理は芸術であるし、両者とも私たちの生活を豊かにするという点は世界共通の認識だ。
海外では寿司やラーメンしか知られていないが、日本は食の伝統や文化が比類無いほど豊かな国である。また、レストランで見る「食品サンプル」のディスプレイは、よだれが垂れる程のリアルさとその珍発想で人気を博す。
今回は、アートに食べ物(スイーツ)を取り入れた個性的な日本人作家の作品をお届けする。
人前で愛を表現することが敬遠されている日本だが、食への愛については過剰な程に公にされていると見える。海外在住の筆者は、日本の友人らがインスタグラムで食べ物の写真をお披露目しているのを頻繁に見かける。自宅であろうがレストランであろうが関係ない。私としては彼らの胃袋事情には興味がなく、近況を知りたいだけなのだ。残念ながら、今さらフォロー解除はできないし、どうしたものか。
海外で大人気のデート相手を探すTinder系のアプリでも、日本では顔写真の代わりに食べ物の写真が溢れていて、もはやUberEatsのメニューよりも充実している。今日のデートはオムライスさん、明日は焼肉さん、と選ぶのが楽しみなのだろうか。そんな私の戸惑いはさておき、スイーツデコレーションアートのパイオニア、渡辺おさむの紹介に戻るとしよう。
作品の詳細はこちらから
渡辺は自身の作品を「フェイク・クリーム・アート」と呼ぶのだが、確かに例のお菓子づくりで使う、袋から絞られたクリームで出来ているのだから納得だ。ただ、ケーキの上にクリーム製の聖母マリア像を優雅に建立するなんて、誰が想像したろうか。お釈迦様なんて、甘い誘惑を纏いつつも、世俗的な考えに邪魔されることなく涼しげに禅に浸っている。クリームは実際は樹脂で出来ているが、レストランの食品サンプルのように、彼の再現力(美味しそうな偽のキャンディー、果物、カップケーキ)には、抗いがたい魅力がある。筆者もこの記事を書くだけで口がヨダレで溢れそうだ。
作品の詳細はこちらから
芸術とパティシエの才能を用いたスイーツアートを通して人々に幸せをもたらすことを使命とする彼曰く、「インスピレーションの源は、パティシエであり製菓学校の教師である母」であるという。印象派の大家であり、仕立て屋の息子でもあったピエール・オーギュスト・ルノワールが服を描くことに長けていた事実を鑑みても、親からの影響には合点がいく。そのルノワールの著名な肖像画「レースの帽子をかぶった少女」を、渡辺が味わい深いオマージュ作品としたのも偶然ではないと思えてくる。味覚では理解できないとしても、視覚で楽しませる料理の達人による逸品であることは疑いの余地がない。
作品の詳細はこちらから
アジアと西洋文化が融合する土地、日本。歴史的にも日本人は、火縄銃やカメラ、自動車など高品質に改善された製品を産出している。文化や芸術も例外なく融合し変質し輸出してきている。渡辺おさむのユニークなキッチンで、西洋のアートと製菓術が日本の独創性とカワイイムーブメントとの幸せな出会いを果たしたのだ。
作品の詳細はこちらから
もっと芸術と食の至福のマリージュ、渡辺おさむの作品を見たい読者の方々についてはTRiCERA.NETでメニューをお手に取られてみてはいかがだろうか。また、この記事が舌に合う様であれば是非、ニュースレターへの登録をお薦めする。
渡辺おさむの詳細はこちら