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  • EXHIBITION

デジタルネイチャー時代のアーティスト:ナカミツキ

2021/09/09
HA.

アーティストのナカミツキは、iPadなどのデジタルツールを用いて絵画を制作します。 データという複製可能な技術を用いつつも、作品の唯一性にこだわり続ける作家のもつデジタルネイチャー*時代の美学に迫ります。

制作を始めたきっかけはなんでしょうか。 小学生の時にてんかんという病気になり入院していました。てんかんは後天性の脳の病気で、その影響で半身麻痺になったんです。当時は状況が飲み込めず、自分は死ぬのではとも考えていました。だから、自分が生きた記録として、何かを残したいと思っていました。その時は筆を持てなかったので、タブレットを使って、絵日記を描き始めました。それが最初のきっかけです。 それ以降は、音楽をテーマに書いていて、イヤフォンを右耳につけて、JAZZなどの即興的な音楽を聴きながら片手でタブレットで絵を書いていました。紙に描くのは両手が必要ですが、半身麻痺でしたから、片手で持てるタブレットが便利でした。 大学時代から動けるようになり、軽音部やジャズ研に所属して、ギターをしていました。 展覧会に作品を出し始めたのが大学2年生の終わりくらいだったのですが、学内展に出して、そのあとに三菱商事アートゲートプログラムに受かりました。以降は、展覧会にバンバン出していこうと思い、アートの登竜門的な公募展をまとめているサイトがあるのですが、そのサイトの上から下までみて、応募したりしましたね。 現在の制作のテーマについて教えてください。 現在はkEYNOTEという造語をテーマに活動しています。 現在、新しいシリーズとして「Key note」というテーマで制作に取り組んでいます。「Key note」とは、”Key”(鍵)と”Note”(音符)を組み合わせた造語で、視覚的なところに頼らず、「鍵になる音」を捉え、聴覚を中心に形成していくことで、より音楽の深層に迫り、音楽の感じ方について今一度捉え直す作品作りに力を注いでいきたいと考えています。 新型コロナウイルスの感染拡大以前は、音楽のセッション会場に行き、その場で描くという事をやっていたのですが、STAYHOMEになってそれが難しくなってしまいました。 これは、そもそも音楽の中にあるライブ感だったり、その中にある瞬間的なタイムラインを描ければいいなと思って行っていたことです。タブレットというのは場所も時間も選びませんから、瞬間的なアイデアを逃さない方法としても合ってると感じています。 今は自宅で音楽を聴きながら、制作をしています。 ですが、やっぱり環境的な問題は感じます。ライブ会場では、光と音が生でくるものですが、家の中ではそうではありませんから、そういった状況下で絵を描くには想像力が必要です。 結果として、最近は作風が少し変わってきたように思います。 これまでは演奏者の手元にフォーカスしていたり、その瞬間に集中して描いていました。しかし、現在はそれらをこれまで得た知識などから改めて自身の中にイメージする必要があります。その結果として、全体の空気感、音楽に対する世界が自身の中に生まれてくるような感じがしています。
(Color, W 97 x H 130.3 x D 2 cm, Multiple Prints, NAKAMITSUKI, 2021)
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影響を受けたもの、自身にとってターニングポイントになっていると思うものはなんでしょうか。

ターニングポイントは病院での生活だったと思います。当時はSNSが流行り出した時で、動画サイトや、サブスクのサービスが少しづつ知名度を得てきていました。さまざまな情報もテレビがつかないので、MixiやTwitterをみて入手していました。 自身の作品や、作家活動については、それらを通した端末文化や、サブカルチャーに大きく影響を受けていると思います。 また、作家としては、アンディー・ウォーホルやアンリ=マティスの作品に影響を受けています。彼らの作品は、自分の見ている世界線と似ているような感覚がありました。  ニューヨークに行って、実際に作品をみたり、スカラーシップに行ったりもしました。 色のセンスが自分とリンクする部分があって尊敬しています。彼らになくて自分にあるものをずっと探しています。 あとは私自身がいわゆるオタクなので、イラストレーターの人たちにも影響を受けましたね。

デジタルとアナログの関係について、絵画制作において、それぞれの利点や弱点をどのように捉えていますか。

アナログで絵を描くということには何千年という文化と美術史がありますが、デジタルはまだ10年くらいの歴史しかない。歴史が浅いから、浸透していないし、メジャーでもないからやはりデジタルでアート作品を描いて発表するというのはやりにくい部分はあります。 漫画やイラストの世界の中では、メジャーなのに現代アートの中ではメジャーではない。今から歴史を作って行かないといけない。 学内展で作品を展示していた時も、なかなかみんな立ち止まってくれないんですよ。その時は、あんまりデジタルがメジャーじゃない事に気づいてなかったんです。 最初は見向きもされませんでしたが、今はコミュニティが発生してきている印象があります。色彩能力を引き出すにはデジタルしかないよねという意見を言ってもらえたりもしました。 しゃべったらなんとかなる事が多いですね。なぜデジタルをアナログにしたいのかで、ひっかかる人は多いみたいですが、私にとっては、アナログもデジタル一緒だったから、特に差がわからなかった。そういう意味ではボーダレスな感じです。だかたデジタルなものを、展示会場というリアルな、アナログな場所に持ってくるならそれはアナログになるよねっていう感覚です。

(Night Shadow, W 97 x H 130.3 x D 2 cm, Multiple Prints, NAKAMITSUKI, 2021)

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デジタルで絵画を制作し、それを出力。その後データを消すとのことですが、このデータの消去というのは、自身の作品制作においてどのような意味がありますか。

先にも述べた通り、私にとってはアナログとデジタルのボーダーは特にないので、出力するということは制作することの延長で、あくまでオリジナルの移動だと考えています。頭の中にイメージがある時は、それがオリジナルでそれをタブレットで描いたときは、そのデータがオリジナル、出力したらそれがオリジナルになるという感覚です。オリジナルを移動させた時に、元のデータが手元に残るのが気持ち悪いんです。私としては、クローン技術に対する違和感に似ています。オリジナルなものがあって、それが複製され、同じものが増えていくということへの違和感です。

(Believe, W 97 x H 130.3 x D 2 cm, Multiple Prints, NAKAMITSUKI, 2021)

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6. 次に実現したいと思っている作品のアイデアがあれば教えてください。

立体に挑戦していきたいと考えています。今は無料で立体をデザインできるソフトとかアプリとかもあって、そういうものを使って作り、例えば3Dプリンターなどで、どこにでも出力できるのがいいところですよね。 これまで平面でしかやってこなかったので、立体の基礎を学びたくて、滋賀県立陶芸の森で勉強したりもしています。
※1 メディアアーティスト・落合陽一が提唱した概念で、「コンピュータと非コンピュータリソース親和することで再構築される新たな自然環境」として捉えられる世界像を示す言葉。(https://www.weblio.jp/content/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC 2021/09/07閲覧)

NAKAMITSUKI

コンセプト

既存のルールにとらわれない多様な価値観を持ち、生活と共にデジタルネイティブとして育った日常的ツール「iPhone」で制作を行うZ世代のアーティスト。 エモい瞬間に五感を解放し、現代のセンスでPhoneに直感的に描き切る。アートをデータ化することで場所を問わずどこでもも出現することかができ、そして一度作品化された画像はiPadのデータから一切削除される。 この現代的なスピード感は、これまでにない新しいアートの形を生み出している。見慣れた楽器をこれまでにない表現で現わすことで、固定化された鑑賞者の視点を揺さぶる。

経歴

1997年兵庫県生まれ。 2020年京都教育大学教育学部美術領域専攻卒業。 2020年個展開催「エモいは私たちを構成する。」(渋谷ヒカリエ / 東京)。 2019年「三菱商事アート・ゲート・プログラム 奨学生展『アートのちから』」(丸ビルホール / 東京) 2021年「 スマホの方が現実。」(「Shibuya Fashion Week 2021 Spring」渋谷ヒカリエ / 東京)、 「FUGA Dining Exhibition」(FUGA Dining / 東京)、 「ブレイク前夜展」(大丸東京 / 東京)など グループ展多数参加。

今回紹介の作品はTRiCERAで取り扱っております。

著者

HA.