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NO BORDER-もしくは横断する力について-

2020/11/21
Shinzo Okuoka

TRiCERAでは11月21日(土)から12月5日(土)までグループショー「NO BORDER」を開催します。この記事ではアーティストを選んだポイントや各アーティストの見所を解説したいと思います。

「分からなさ」を楽しむアート

今回はジャンルや線引きが難しく、型にはめて鑑賞することが出来ないような方々を選出しました。
日本にも海外にも、それから今も昔も、アートにはいろいろなジャンルがあります。今回選んだアーティストは既存の枠組みからは説明が難しい方々が多いと思います。でも言葉に出来ないということは、それだけ新しさを持っているということの証拠かも。

目で見て楽しむことももちろんですが、その作品の魅力を言葉で楽しむことができる点は現代アートの特権かもしれません。
絵具やキャンバスの裏側にあるアーティストの思考そのものを、ぜひ楽しんでみてください。

参加アーティストについて-注目するポイント-

平田尚也 | Naoya Hirata

平田さんは1991年長野出身のアーティストですが、特徴はなんと言ってもネット上から集めたデータを使って仮想空間で彫刻を制作するという姿勢。だから自分のことも彫刻家だと言います。平田さんは「空間性と時間性を持ったものが彫刻」だと考えていて、既存の空間や素材(鉄や木材)の捉え方が違うだけで、やっていることはトラディショナルな彫刻作品なのです。彼の作品は「デジタルとリアルは対義語なのか?」と考えさせられ、何より現代人である私たちにとっての空間や時間を問い直すきっかけにもなります。

預言者 2019 33 × 27.5cm アルミニウム合金にデジタルシルバープリント Edition1/3 

 

畑直幸 | Naoyuki Hata

九州を拠点に活動している畑さんは、最近では被写体に色を塗って撮影するというスタイルで制作をしています。人間の目は光を反射によってものを見たり、色を判断したりしますが、畑さんの作品を見ていると、自分たちの目に見えている色は本当の色とは違うかもしれないなという思考と直結すると思います。ある意味、人間の視覚を試すような写真作品なんですね。

g/b//u/ #1 2020 29.7 × 42cm デジタルシルバープリント Edition1/10 

斉木駿介 | Syunsuke Saiki

斉木さんはキャンバスをディスプレイに見立てた絵画を制作するペインター。情報やコミュニケーションの多くをスマホやPCに依存している私たちにとって端末のディスプレイは目そのもの、視界そのものに近いと思いますが、そういう現代人のパースペクティブであるディスプレイを模した斉木さんの絵画は、ある意味、存在それ自体がすごく立体的だと思います。私たちの目そのものを取り出したかのような、どこかシニカルさがありますよね。

日常とディストピア 2019 60.6 × 91cm アクリル・油彩・キャンバス

只野彩佳 | Ayaka Tadano

只野さんは日本画の技法を使いながら現代絵画のようなテーマを用いる方。「いつかは消えてしまう私たち人間」という刹那的な様を描いた風景画を手掛けています。日本画は鉱物を原料にした絵具を使うので表面がざらざらとしているのですが、そのモノ感が只野さんのテーマである「永遠性のなさ/モノはいつかなくなる」と相まってすごく感傷的な演出になっていると思います。

まだ旅の途中 2020 35×50cm 岩絵具・木製パネル・和紙

曾超 | Zeng Chao

中国出身のゼン・チャオさんは中国絵画の伝統と現代絵画をマッシュアップするひと。中国では伝統的に「どれだけ気が表現されているか」が絵画の評価ポイントになるんですが、彼はわざと絵筆の跡がわかるように仕上げることで描いているときの自分の息遣いや感情の揺らぎを表現し、気を可視化させます。言い換えるとすごく画家の存在が見え隠れする絵画作品なんです。

KS190829 2020 53×53cm キャンバス・油彩

ニール・トムキンズ | Neil Tomkins

ニール・トムキンズは実際の風景とそれを見る人の感情の間にこだわりを見せます。ひとって景色を見たり思い出したりするときにはその時の気持ちが混ざると思いますが、彼はそんな風にひとは風景を通して自分自身の感情を見つめているんだと考えるのです。

Morning Sprit 2019 46×36cm アクリル・キャンバス

ガヒョウ・チョ | Gahyo choe

韓国を拠点に活動するガヒョウ・チョの作品は、すごく端的にいうとゼロから空間をつくり上げているのが面白いところ。彼女は自分の見た夢をスケッチし、それをつぎはぎしながら風景を組み立て、夢の質感を表現するためにごく薄く絵具を塗り重ねるんです。絵画の文脈でいうと、どちらかといえば抽象絵画のようでもあるし、でも夢の中の視覚を描いている点では具象性もある。夢と現実の関係性のようにすごく微妙なラインを描いているようにも思えます。

Free world#1 2019 65×53cm ガッシュ・オイルパステル・キャンバス

アートを知るということ

絵画にせよパフォーマンスにせよ、アートとしてどうしても逃れられない点って目に見えるものであることだと思います。視覚情報ってものすごく強力。人は見た目が100%と言われたりしますし。でもアートは作り手の感情とか思考とか、あとは歴史とか社会状況などを造形物という言語で語るものかなと。視覚で完結しててももちろん良いのですけれど、その後ろにアクチュアルに存在している思想を鑑賞するともっと楽しいと思います。

「このピカソの絵はどうしてこんなぐちゃぐちゃなのか?」とか、見方を変えると作品は謎かけのような仕組みを持っています。アートというなぞなぞは、その解き方を自分なりに見つけていくところに楽しみの一つがあるのかもしれませんね。

執筆者プロフィール

著者

Shinzo Okuoka